「ヨナオシフォーラム2020」(代表世話人:金子勝)は、「分散ニューディールを軸とする緑の復興」をテーマに、下記のとおり、第2回 集会を開催しました。
開催概要
日時:2020年7月30日(木) 15:00 〜 17:00
会場:衆議院第2議員会館 第7会議室および Zoom
主催:ヨナオシフォーラム2020(代表世話人: 金子勝)
テーマ:「分散ニューディールを軸とする緑の復興」
古賀茂明「日本の産業衰退の現実」との問題提起を踏まえ、金子勝・飯田哲也・大沢真理の各世話人を交えて「緑の復興」を提案します。
進行:佐々木寛(世話人)

古賀茂明
古賀茂明政策ラボ 代表

金子勝
立教大学 特任教授

飯田哲也
ISEP 所長

大沢真理
東京大学 名誉教授
まとめ
- 日本の産業と経済の衰退が著しく、アベノミクスを軸とする成長戦略は破綻し、次の産業の芽も見えない。地域をベースに分散ニューディール、グリーンリカバリーを軸とした新たな産業戦略が必要。経産省を解体しDX省などを創設し、民間人と外国人を活用。地方への大胆な権限移譲も必要。
- 雇用の流動性と次の時代のために大胆な教育投資が必要。炭素税などの税財政改革や実質賃金・最低賃金の引き上げや働く女性の待遇改善なども必要。
講演要旨
- この30年ずっと停滞した日本は、GDPや一人あたりGDP、ドルで見た賃金ベースなどで欧米諸国だけでなくアジアの中でも遅れを取りつつある。成長より分配という意見もあるが、日本は幸福度ランキングでも低下し、今後の必要な公的負担をカバーするにも競争力は必要。
- 産業を見ると、自動車の「一本足打法」となっており、鉄鋼・半導体・家電・携帯などすべてが「過去の栄光」になっている。その自動車も水素に賭けて電動化に遅れ自動運転化にも遅れて、世界最大の自動車メーカであるトヨタも時価総額でテスラに抜かれた。
- 有機EL、5G、ドローン、EV、自動運転、自然エネルギー、AI、クラウドなど次の産業技術にも取り残されており、それに投資する資金もない。日本の産業界は良質な中間財しか売るものがないが、パナソニックも5G用部品工場を中国に投資という流れ。
- 経産省が進めた「日の丸連合」はことごとく失敗。日の丸液晶のJDI、東芝メモリ(キオクシス)のみの日の丸半導体の凋落、瀕死のルネサス、5Gで大きく出遅れた「日の丸連合で6G」という無謀など。風力発電メーカも不在、太陽光パネルも凋落。
- 金子:貿易収支で見ると2010年あたりから日本はまったく稼げない国になっている。円安で輸出や株高演出だけのアベノミクスを軸とする成長戦略は破綻。分散ニューディール、グリーンリカバリーを軸とした新たな産業戦略が必要。
- 飯田:自然エネルギー(太陽光と風力、蓄電池)が驚異的な変化を起こしており、これから10年で化石燃料市場が大崩壊を起こす可能性、モビリティもEV+自動運転+ライドシェアのMaaS革命が起きつつあり、誰も自動車を買わない時代が目の前に来つつある。
- 大沢:増田レポート「若い女性が半減する自治体は消滅」という衝撃。比較的若い女性の雇用のボリュームゾーンである医療・福祉などで、エッセンシャルワーカーの待遇を改善して自治体に定着してもらうことが必要。
質疑応答
SDGsによる地域再生の可能性は?
自然エネルギーと蓄電池は経済的にもできる地域ビジネス。地域のオーナーシップが重要。送電線を独占する地域電力の一つの経営権が取れれば、一気に変わりうる。
政府の経済政策は何をすればよいか? 有権者は何を見て判断すればよいか?
安倍政権は株価だけを指標にしているが、実質賃金・最低賃金が重要。国が邪魔している規制の緩和と逆に緩い規制の強化などメリハリを付ける。また教育強化が最重要。
「大きな政府」として、負担は定率・給付は定額ではどうだろうか?
中央と地方の役割を変えて大胆に権限移譲していく。ご当地エネルギーが圧倒的に有利な仕組みに。
石炭火力の終わりが見えてきたのは良いが、日本の異常値はどうすればよいか? 労働者の転換が必要ではないか?
細かい規制が数多くあって、海外の企業が非常に入りにくい。海外企業参入ありきで。労働者への大規模・広範囲な教育が必須。
日本の産業の衰退はよく分かったが、グリーン・ニューディールで新しい産業と分散型が出るには炭素税が必要ではないか?
日本は米国・トランプ型ではなくEU型を目指すべき。炭素税は必須。
「ニューディール」へのアプローチ主体は政治か地域か? 働く側の視点も重要ではないか?
保健師・看護師の最低賃金を上げる必要がある。
エネルギー変革の具体的なアプローチは?
地域から小さな成功モデルを作って拡大してゆくこと。
ファーウェイなど中国勢とどう付き合うか?
アメリカの圧力もあって非常に難しい。日本は大国主義を捨てて、中国とは協調し経済的には連携して、競争力をつけること。
DX省とは?
経産省が最大の障害、総務省も含めてDX省を設立し、民間人・外国人を活用。資源エネルギー庁を廃止して環境省に。大胆な省庁再編・規制改革が必要。