「ヨナオシフォーラム2020」(代表世話人:金子勝)は、保坂展人氏をスピーカーに迎え、下記のとおり、第4回 集会を開催しました。

東京都世田谷区は米ニューヨーク州をモデルに、複数人の検体を一度に検査する「プール方式」も導入して1日に数千件のPCR検査ができる「世田谷モデル」の体制整備の検討を始めました。早期発見で感染の広がりを抑えることが最大の経済対策だと主張する保坂区長から最新の状況を伺って、議論を深めます。

開催概要

日時:2020年8月11日(火) 11:00 〜 12:30
会場:衆議院第2議員会館 第5会議室 および Zoom
主催:ヨナオシフォーラム2020(代表世話人: 金子勝)

講演:

「PCR検査数を1桁増やす!『世田谷モデル』が最大の経済対策」

保坂展人 / 世田谷区長

1955年、宮城県仙台市生まれ。中学校卒業時の「内申書」をめぐり、16年にわたる内申書裁判の原告となり、その後教育問題を中心に取材するジャーナリストになる。 96年11月、衆議院議員初当選。09年までの3期11年で546回の国会質問に立ち、「国会の質問王」との異名をとる。 2011年4月の世田谷区長選挙で初当選。 世田谷区長としての取り組みをまとめた、『88万人のコミュニティデザイン』『脱原発区長はなぜ得票率67%で再選されたのか?』『〈暮らしやすさ〉の都市戦略――ポートランドと世田谷をつなぐ 』『NO!で政治は変えられない―せたがやYES!で区政を変えた8年の軌跡』ほか、著書多数。

保坂展人

世田谷区長

まとめ

  • 「世田谷モデル」では、複数検体を同時に計測するプール方式を用い、PCR検査機器を持つ大学と連携することで、1日あたりの検査数を一桁増やす大量かつ安価な検査の実証を進めている。この「社会的検査」で無症状者による感染拡大の防止やエッセンシャルワーカーへの徹底検査などで、地域住民の健康と安全を守る。
  • 保健所を中心とする行政検査の能力が限界に達しており、これを区と大学、医師会など民間の力でカバーしてゆく。検査拡大が最大の経済対策になる。

講演要旨

  • 7月27日の児玉龍彦東大先端研名誉教授の提案で、プール方式(一つの試験管に4つか5つの検体を入れ一つの測定器で一度に500人がPCR検査できる方式)を用いて、大量かつ安価に検査する「世田谷モデル」を検討している。
  • 世田谷区では、現在、一日あたり200人から300人の検査だが、これを10倍の2,000人から3,000人の規模を目指す。これで、高齢者施設や介護施設などで無症状者が感染を拡大しクラスター化しないよう先回りをして検査する「社会的検査」をしてゆく計画。
  • ゆくゆくは、ニューヨークで先行している「いつでも誰でも何度でも無料の検査」を目指したい。
  • 世田谷区は人口92万人と東京都の約1割、感染者も約1割。累計で1,222人、入院者144人、ホテル療養122人、自宅療養83人、死亡者19人で、東京都と相似形だが、さらに地域別・感染源の状況・年代・性別・重症等患者の状況など詳細分析をしている。
  • 第1波では、中国武漢や欧州など海外からの帰国者が多く、30代から50代が中心。第2波は20代から30代が圧倒的に多く5割を超える。彼らが家庭内感染や介護施設などで高齢者に感染拡大させつつある。世田谷区には千箇所近い介護・高齢者施設がある。
  • 3月から医療機関でも院内感染が起こり、保健所でも行政検査の手が回らない、電話も繋がらないなど大変な状況と聞いて、4月7日に区長主催の医療機関情報連絡会を開催、これが効果的で、翌日にはPCR検査センターを立ち上げることができた。かかりつけ医から保健所を通さない地域外来検査センターに持ち込むなど迅速な体制となった。
  • 第2波となり、規模の大きい社会福祉施設も多く、濃厚接触者も100人を超えて、当時の世田谷区のPCR検査能力が1日360件なので限界が目に見えていた。このため、児玉先生の提案でプール化や自動化で一桁増やす「社会的検査」の方向を目指すことにした。同時に、7月に1,000人規模の抗体検査も世田谷区で実施している。
  • クラスターを追跡する保健所もパンク状態なので、保健所中心の行政検査の外側に、ココアのダウンロードとトレーサーシステムの本格的利用の推進など民間の力でカバーしてゆくことが必要と考える。
  • 検査拡大が最大の経済対策だと考えている。財源は厳しいが、全国から3,000万円の寄付が集まっている。不十分だが「社会的検査」の激励と受け止めている。

質疑応答

日本のコロナ感染症対策は「検査しない」という体勢で塗り固められて2月のクルーズ船の時から一向に改善しない。検査は集団を守るとともに個人も守ることは当たり前で、保坂区長の取り組みにエールを送りたい。

感染拡大と感染集積を生む無症状者の洗い出しと隔離にローラー検査が必要だが、日本では縦割りと法制度の問題があり進まない。クルーズ船の時から心配だったが、7月に第2波が広がる中で GoTo キャンペーンを推進しながらリモートワークなど統治機構として混乱している。92万人の区民の健康と安全を預かる観点から先行例を作った。

コロナ差別にどう対処するか?

行政として啓発が必要。

一件どのくらいのコストで出来る?

1件5千円以下を目指している。

大学との連携は?

社会的検査で東京大学先端研と連携している。

PCR検査と同時に抗原検査をどのように使い分けるか?

簡易PCRキットなども活用して使い分けを検討している。

検査後の陽性者の隔離は?

ホテル確保に向けて準備中。

COCOA の活用が進んでいないが?

世田谷だけでも6割程度まで運用できれば実用になるとの児玉先生の意見もあり、活用を進めたい。

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