「ヨナオシフォーラム2020」(代表世話人:金子勝)は、児玉龍彦氏をスピーカーに迎え、下記のとおり、第6回 集会を開催しました。
第6回集会では、講師として初回に続いて改めて児玉龍彦氏(東京大学名誉教授)をお招きし、「経済再生に向けた地域からの膨大検査・隔離による感染抑制へ 第2弾」と題して、その後に始まったGoToトラベルの影響や前回保坂区長にお話いただいた世田谷区のモデルなどについてもお話しいただきました。
開催概要
日時:2020年8月25日(火) 14:30 〜 16:00
会場:衆議院第2議員会館 第5会議室 および Zoom
主催:ヨナオシフォーラム2020(代表世話人: 金子勝)
講演:
「経済再生に向けた地域からの膨大検査・隔離による感染抑制へ 第2弾」
児玉 龍彦 / 東京大学 名誉教授

児玉 龍彦
まとめ
- コロナウィルスは世界各地で変異しており、水際では厳重な警戒が求められる。
- コロナウィルスは現在、感染者数が増えては減るという循環型を示している。ピーク後に感染者数が減る際、徹底的に検査を行い、感染者数をできるだけ減らすことにより、次の波に資源を回せるように対策していくことが大切。
- 今後は、新しい医療技術や情報管理システムへの理解を深め、より効果的な感染者と濃厚接触者の追跡と検査を始めることが課題である。
講演要旨
- 現在、東アジアでの感染が他エリアと比べて少ないのは、コロナウィルスに似たウィルスに対する免疫があり、交差免疫があるからだと考えられている。
- ウィルスは1年間で24ヵ所変異するほどの速さで変化しており、外からの変異したウィルスを国内に持ち込まないためにも、水際警戒を厳重にすることが重要。
- 現在、感染者数が突如増えて減るというパターンを繰り返す、循環型をコロナウィルスは示しており、ピーク後の感染者数が減少する際、徹底的な検査を行うことにより「Without Corona 社会」を目指す。
- 地域がエピセンターになった際は大量の集中検査を行い、周辺地域ではモニタリングで感染拡大を防御し、非集積地域では抗体検査とPCR検査の組み合わせで対応することが望ましい。
- しかし、新宿においては、検査数の拡大の代わりに警察の動員が行われ、人口流出が進んだため、東京・埼玉型のウィルスが全国に拡大した。
- 一方、新宿の周辺地域の世田谷区では自動検査機械を使用し、検査数拡大によるモニタリングを徹底することにより、感染を抑えることができた。民間企業や大学がエッセンシャルワーカー2万人の検査を受け持つことで、保健所や医療機関の負担を軽減し、無症状感染者の拡大が起きやすい保育園や老人施設でのクラスター発生を抑えた。
- 世田谷区では、感染症に強い看護師を民間企業や外部から派遣することで医療を緊迫させない仕組みをとった。
- 今後、GPSを用いたコンタクトトレーシングのために信頼のできる健康・情報の民主的管理の仕組みを作る事が大切。
- 新しい画期的な変化に関しては、成功事例を地域からでも作っていくことが命を守る際のカギとなる。
質疑応答
陽性率下がっているのはどういうことなのか?
コロナウィルスは急に出てきて、急に消える傾向があり、交差免疫のおかげで全体に広がりにくいので陽性率が下がっているのでは。なぜ波型なのかは今のところはわからない。
スウェーデンの集団免疫獲得に向けた対策はどうだったのか?
当初、検査拡大をためらっていたアメリカ、イギリス、スウェーデン、日本は他国と比べてやはり感染者数は多いため、検査の規制は好ましくない。また、スウェーデンも現在は検査数を拡大しコンタクトトレーシングに集中している。
政府はピークアウトしたと言っているが、それは国民の自助努力のおかげだったのか?
感染の減少は緊急事態宣言以前に始まっていた。全国一律のロックダウンではなく、現場の状況を踏まえた精密な対策が必須であり、そのためには検査体制を整えることが重要。
大学の再開については?
大学が先端に立って基本的な感染防護の仕組みをつくり、若者からの感染防護に徹することも大切。
抗体検査とPCR検査の違いとは?
抗体検査は患者の治療と疫学調査のために行われるが、PCR検査はウィルスを出しているかどうかを検査している。
コロナウィルスが感染症Ⅱ類にされたことで法的にできないことが多いので、特別立法で検査体制の充実を図るべきでは?
コロナウィルスは他のウィルスに比べ社会的影響が大きいのでコロナに合わせた法的な対応が望ましい。