「ヨナオシフォーラム2020」(代表世話人:金子勝)は、赤石千衣子氏、青柳雄大氏、三浦まり氏をスピーカーに迎え、下記のとおり、第7回 集会を開催しました。

第7回集会では、世話人の大沢真理をコーディネーターとして、パネルディスカッション「包摂する社会が危機にも強い」を開催します。日本の生活保障システムが「標準世帯」本位で、多様性を包摂しないがゆえに、コロナ禍でかえって被害を広げたことを見据え、脱却の途を探ります。

開催概要

日時:2020年9月1日(火)15:30~17:00
会場:衆議院第2議員会館 第5会議室および Zoom
主催:ヨナオシフォーラム2020(代表世話人: 金子勝)

パネルディスカッション:「包摂する社会が危機にも強い」

講演:「専業主婦を前提する「対策」が被害を拡大」

大沢真理 / 東京大学 名誉教授長

最近の著作:編著『災害・減災と男女共同参画』ISS研究シリーズ第66号。共著『日本のオルタナティブ 壊れた社会を再生させる18の提言』岩波書店。

大沢真理

東京大学 名誉教授

講演:「コロナとひとり親家庭の窮状」

赤石千衣子 / NPO法人しんぐるまざあず・フォーラム 理事長

NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長。シングルマザーと子どもたちが生き生き暮らせる社会をめざして活動しています。著書に『ひとり親家庭』などがある。

赤石千衣子

NPO法人しんぐるまざあず・フォーラム 理事長

講演:「若者の社会においての存在意義-ジェンダー・セクシャリティの視座から」

青柳雄大 / できること会議 代表、早稲田大学在学

1999年生まれ / 早稲田大学4年 社会言語学・社会イノベーション専攻 / 早稲田大学スチューデントダイバーシティセンター 学生スタッフ/allbirds Japan, Brand Ambassador / SHIBUYA QWS チャレンジプロジェクト4期生 / Marriage for All Japan インターン / 27カ国・旅行滞在

青柳雄大

できること会議 代表、早稲田大学在学

講演:「危機に強いリーダーシップとは」

三浦まり / 上智大学法学部 教授

専門はジェンダーと政治、現代日本政治論、福祉国家論。主著に『私たちの声を議会へ:代表制民主主義の再生』(岩波書店,2015年)、『日本の女性議員:どうすれば増えるのか』(編著、朝日選書、2016年)など。

三浦まり

上智大学法学部 教授

まとめ

  • すでに貧困により困窮していたひとり親などの世帯がコロナウィルスでの休業や自粛などにともない、更なるダメージを受けた。今後、税・社会保障制度を見直し、少子化社会に合わせた女性やひとり親が働きやすい制度を作るべき。
  • 多様性重視社会でマイノリティや女性が活躍できる社会は危機にも強いということが今回のパンデミックで明らかとなったため、今後は日本でも政治に若者やマイノリティの声を反映させ、女性も積極的に政治参加できるような社会を構築していくことが求められる。

講演要旨

専業主婦を前提する「対策」が被害を拡大 / 大沢真理

  • 以前から税・社会保障制度が低所得者を冷遇し、共稼ぎ世帯、ひとり親、単身者の貧困を深めていたが、それがコロナで浮き彫りとなった。
  • 男性稼ぎ主を前提とした世帯単位の社会保障制度は子育て世代の女性が働くことを前提としていないため、脆弱である。
  • 90年代後半からの法改正や医療制度の見直しにより、感染症病床数、保健所数、職員数の削減がおこなわれていたため、大量の検査を行い経済活動を維持しつつもコロナウィルス対策をすることができず、特にシングルマザー世帯などでの経済的打撃が大きく見られた。

コロナとひとり親家庭の窮状 / 赤石千衣子

  • コロナ禍、食糧支援を必要とするひとり親世帯が増え、しんぐるまざあず・ふぉーらむは約7,000世帯に食糧支援をおこなった。
  • 困窮の原因としては、一斉休校と自粛に伴う就労の減少、もし感染した際に子供の面倒を見る人がいない不安による自発的な休業、非正規雇用の休業手当の欠如が挙げられる。
  • 政府と現場とのギャップにより、緊急小口資金などの政府対応も現場に届きにくく、困窮は防ぎきれなかった。今後は政府と現場との連携を強くしていきたい。
  • 今後、緊急時にのシングルマザーの困窮を防ぐためにも、シングルマザー世帯の平常時の脆弱性の解決が必要。そのためには男女賃金格差、正規・非正規雇用の格差の是正と児童扶養手当の拡大を。

若者の社会においての存在意義-ジェンダー・セクシャリティの視座から / 青柳雄大

  • 政治や社会問題に関与したいと思っている若者が他先進国に比べ圧倒的に少ないのが日本の現状であり、投票率も低い。この無力感の原因としては少子高齢化、年功序列といった社会風潮が背景にあるのではないか。
  • LGBTQ+コミュニティにおいては、政府によるアイデンティティの不可視化による存在意義の否定や、若者とマイノリティという二重の社会的な弱さから来る無力感が考えられる。LGBTQ+差別禁止法や同性婚合法化も多様性重視社会を目指すためには必要である。
  • 多様性重視社会は危機に強く、今後は政治や政策決定に若者やマイノリティの声も反映させることが重要となる。

危機に強いリーダーシップとは / 三浦まり

  • 女性首相は世界で7%ほどだが、新型コロナウィルス対策を率先する10か国のうち、4か国は女性首脳である。
  • 女性リーダーはジェンダーステレオタイプ(例:女性はケアの役割を担う、共感力がある、コミュニティ志向が強い)に基づいた期待を求められるため、ヘルスケア危機の際は女性性がプラスに動き、率先して対策ができたのだと考えられる。また、女性が首脳になれる国はガバナンスにおいて人材登用システムがよりフェアであるため、優秀な人材が対策に徹したのだと推測できる。
  • 一方で男性リーダーは強くなければならない、間違いを認めて弱みをみせてはならないといったジャンダーステレオタイプに基づいた有害な男性性に囚われたため、新型コロナウィルスに十分な対策ができなかったと捉えられる。

質疑応答

若者が政治に関心をもつにはどうしたらいいのか?

若者が声を挙げた際には無駄にしないことと、SNSを通して若者の身近に起こる問題を発信していくことが大事。

以前、女性リーダーは安全保障に弱いと思われていたというのはどういうことか?

他国でみられるように、防衛大臣が女性だと安全保障に関しては軍事的力ではなく平和構築に軸を置く傾向にある。

シングルマザーを助けるにはどうすれば?

現金給付の所得制限の見直しや児童手当の拡充を用いて、政府が所得再分配すると貧困が深まる現状を治すべき。低所得者にかかる社会保険と地方税の負担が重いため、社会保障と税の一体改革が必要。

若い女性の看護師の感染率が高いにも関わらず、給料などの手当が不十分な原因とは?

看護師、保育士などもどんどん非正規化しているため、エッセンシャルワーカーの待遇が悪化しているのが現状。

第7回 集会に関するお問い合わせは下記のフォームからお願いいたします。

お問い合わせ