「ヨナオシフォーラム2020」(代表世話人:金子勝)は、飯田哲也(当フォーラム世話人、環境エネルギー政策研究所)、宮内稔氏(飯田市立病院 事務局長)・丸山晃治氏(同 地域医療連携係長)を報告者として、2020年9月24日、第8回 集会を開催しました。

第8回集会では、「地域からのグリーン・リカバリー」をテーマに、再生可能エネルギーについては、ドイツの地域の実例や世話人の飯田哲也が話題提供者となり、また地域の包括ケアシステムについて南信州の具体的な取組事例を踏まえ、地域からの再生の方向性を探ります。

開催概要

日時:2020年9月24日(木)16:30~18:00
会場:衆議院第2議員会館 第6会議室および Zoom
主催:ヨナオシフォーラム2020(代表世話人: 金子勝)

テーマ:「地域からのグリーン・リカバリー」

ビデオ・プレゼンテーション:「再エネ300%のドイツ・ラインフンスリュック郡の事例」

報告:

地域からのグリーン・リカバリー

飯田哲也(環境エネルギー政策研究所 所長)

飯田下伊那診療情報連携システム「ism-Link」(イズムリンク)

宮内稔氏(飯田市立病院 事務局長)・丸山晃治氏(同 地域医療連携係長)

まとめ

  • 地域が自立したシステムやネットワークや作っていった例をエネルギーと医療において紹介。
  • 地域分散型のエネルギー体制や医療体制がこれから何十年後も持続する社会を構成する重要な役割を担う。

講演要旨

「地域からのグリーン・リカバリー」飯田哲也(ISEP所長)

  • ドイツ・ラインフンスリュック郡ではエネルギー依存からの脱却し、資源を町の活性化に回すことに成功している。具体的には、村所有の土地を風力発電に貸し出して得た収入を、観光施設の建設に充て、小さな田舎の村を全体観光地に変えることに成功した。
  • 自然エネルギーの拡大は世界的にも加速しており、これから太陽光と風力が主電力化していくことは世界共通のコンセンサスである。
  • 技術学習効果により、太陽光と風力発電のコストは年々低下し続けており、再生エネルギーの拡大は全世界で進んでいる。
  • 今後、エネルギー体制や社会的な構成を地域の人中心に組み替えていく事が日本でも重要である。

「飯田下伊那診療情報連携システム「ism-Link」(イズムリンク)」

宮内稔氏(飯田市立病院 事務局長)・丸山晃治氏(同 地域医療連携係長)

  • ism-Linkは長野県飯田市で用いられているICT(情報通信技術)による診療情報の連携システムである。
  • 高齢化が進んでいる飯田市で、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けるための安心を提供することを目標としており、介護系職種、訪問看護師、かかりつけ医、後方支援病院間の連携を用いた地域包括ケアシステムの構築を目指している。
  • 平成21年度に作成、現在の住民の加入率は20%ほどで、地域施設の63%がシステムに参加している。
  • 情報共有により、医師の診断も訪問介護職員の記録を用いてより正確に、介護職員も医師の診断等に基づいてより的確に介護ができるようになる。

質疑応答

診療情報連携システムを作る際に難しかったところは?

開発当時は病院と診療所の連携システムだったが、頭打ちになり、介護系のシステムも参加してもらい事業が広めることができた。

診療情報連携システムの財政はどう組み立てたのか?

開発当時(平成21年)はリーマンショックの後で、様々な経済対策が行われていたため、そこにICTも足すことができ、行政の支援を受けてシステムを立ち上げた。しかし、以後のサーバ―更新の際、国の支援がほとんどなかったが、システムの価値を地域にわかってもらうことで、市町村と県の補助で継続をすることができた。

日本ではドイツのような成功例はあるのか?

ドイツ・ラインフンスリュック郡ほどの規模の例はないが、飯田市の再生エネルギーへの取り組みなど、部分的な成功例がある。

なぜ日本には技術力や経済力があるのにドイツのようなことができないのか?

データに基づいた判断ではなく権益に基づく行政と、創造力や思考力を養う教育やSTEM教育に国がさほど投資していないことが理由として挙げられる。

ICTを認知症とその家族支援にどう用いているのか?

今年度の更新で、介護のレンタル事業者や家族の介護者等の身近な人もシステムを通して連携できるよう、検討している。現在は、対面式の認知症カフェを用いて地域内での情報交換などをできるよう心がけており、これから認知症カフェとICTがどう連携できるか検討する見込み。

診療情報連携システムに関し、現時点で国に求めたいことは?

更新をするお金がなく破綻するシステムもあるので、行政の支えも必要である。

イズムリンクでは、コロナ禍で保健所とどのように連携したのか?

医師会との連携もあり、独自の検査機関を県内でも先導して作ることができた。

看護師や保健師さんの自立に対し、医師会の反応は?

医師も看護師や保健師の詳しい容体報告などのおかげでより多くの患者を診断することが可能となり、助かっている。飯田市では医師も看護師や保健師との連携を大切に思っている。

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