「ヨナオシフォーラム2020」(代表世話人:金子勝)は、「原子力と地域社会〜柏崎刈羽原発再稼働と寿都町核廃棄物調査受入問題」をテーマに、下記のとおり、第10回 集会を開催しました。

第10回集会では、原発再稼働を巡って地域も世論も二分されている柏崎市の現地からの中継を軸に、核廃棄物最終処分調査の受け入れ問題で揺れる寿都町も結んで、「原子力と地域社会」をテーマにこれからの方向性を探ります。

開催概要

日時:2020年11月7日(土)20:00~22:00
会場:Zoom および YouTube Live
主催:ヨナオシフォーラム2020(代表世話人: 金子勝)

テーマ:「原子力と地域社会〜柏崎刈羽原発再稼働と寿都町核廃棄物調査受入問題」

登壇(敬称略)

  • 樋口英明(元福井地裁裁判長)「原発再稼働差止判決のロジック」
  • 今田高俊(東京工業大学名誉教授、日本学術会議・高レベル放射性廃棄物の処分に関する検討委員会の取りまとめ役)「核のごみ処分に関する政策提言と国民的合意形成について」
  • 米山隆一(元新潟県知事)「柏崎刈羽原発検証委員会設置の背景」
  • 佐々木寛(新潟国際情報大学教授、県検証委員会避難委員会副委員長)「検証委員会の状況」
  • 吉野寿彦(子どもたちに核のゴミのない寿都を!町民の会 共同代表)「寿都町の現状報告」
  • 柏崎市長候補(桜井雅浩市長(交渉中)、近藤正道氏)「柏崎の現状、再稼働に関する考え」

進行

  • 佐々木寛(当フォーラム世話人)

まとめ

  • 福島原発事故は幸運が重なったのであの程度の被害で済んだ。メルトダウンになっていたら半径250㎞、4,000万人の避難になっていた。
  • 原発は事故が起きた場合の被害が非常に大きいのに耐震設計が弱い。危険なのに裁判で止められないのはおかしい。
  • 学術会議は、内閣原子力委員会に対し、2012年9月「回答:高レベル放射性廃棄物の処分に関する取り組みについて」を提出し、2015年4月「提言:高レベル放射性廃棄物の処分に対する提言-国民的合意形成に向けた暫定保管」を提出している。
  • 提言では、責任論理と公平原理の基本原則、暫定保管と総量管理の考え方にもとづいた社会的合意形成のプロセスをつくる必要性を述べている

講演要旨

原発再稼働差止判決のロジック / 樋口英明

  • 福島原発での幸運:4号機では、たまたま工事が長引いて多量の水が炉心に残されていた、など複数の幸運があった。
  • 原発の耐震性:原発は数100ガルの強度の地震に耐えるように設計されるが、日本では2000年以降だけでも2000ガルを超える地震が数回発生している。地震で建物が壊れなくても断水や停電でメルトダウンは発生する。しかしこれを理解している裁判官はほとんどいない。これは裁判で争われるのは、規制委員会の基準に達しているかどうかだけだから。

核のごみ処分に関する政策提言と国民的合意形成について / 今田高俊

  • 国民的合意形成の課題:エネルギー政策・原子力政策に対する国民的合意の欠如、超長期間(万年以上)にわたる汚染発生可能性、受益圏と受苦圏
  • 国民的合意形成:科学の限界の自覚、多段階の意思決定を通じた合意形成
  • 暫定保管:期間は50年(30年で合意形成と適地選定、20年で建設)
  • 総量管理:総量の上限を確立
  • 合意形成に向けた組織:高レベル放射性廃棄物問題総合政策委員会、核のごみ国民会議、科学技術的問題検討専門調査専門委員会の3本立て

寿都町の現状報告 / 吉野寿彦

  • 寿都町の現状:町民は町長の方針に猛反対、説明会では満足な説明なし
  • 住民投票を目標
  • 核廃棄物調査受入:多額の交付金が理由と思われる。

柏崎刈羽原発検証委員会設置の背景 / 米山隆一

  • 合意形成:合意形成をしたい政治家が権力を持って進めない限りできない。100%の合意は不可能だがプロセスは必要。大半の人が納得して地域分断にならないようにするのが政治家の役割。
  • 交付金:交付金で文献調査だけは原理的に可能だが、一度国から受け取ると逃げられない。

柏崎の現状、再稼働に関する考え / 近藤正道

  • 柏崎市の現状:明日(11/8)から市長選挙、柏崎原発再稼働が最大テーマ
  • 再稼働への可否:現市長は賛成の立場(市長が賛成で住民投票などは不要)、報告者自身は反対だが決定自体は市民が行うとの立場

コメントと補足

  • 原発に関する合意は、ごみの問題含め期間が長いのとリスクが大きいため、それ以外の議題と合わさった議員選挙や知事選の結果で判断というのは適切ではない。丁寧な仕組みで時間をかけてやる必要がある。経産省が現在進めている核のごみ処理問題への対応は大きな無駄になる可能性が大きい(古賀茂明/古賀茂明政策ラボ 代表、当フォーラム世話人)。
  • 原発再稼働に関しては、情報を与えて市民が決める形にしていきたい。原発再稼働により経済が上向くという希望を持つ人もいるが、そのような事実はない。これから市長選だが、今回は合意について改めて考えるいい機会になった(近藤/報告者)。
  • 原発は世界的には衰退産業。原発にしがみつくのではなく、新しい産業構造にしていく必要がある(金子勝/立教大学大学院 特任教授、当フォーラム代表)。
  • 原発は経済上昇になっておらず柏崎は新潟県では衰退気味。原発の技術は東電などで、地元で蓄積した技術で発展していかないとうまくいかない(米山/報告者)。
  • 先にあげた例以外での福島原発事故時の奇跡的な事項は、4号機の隣の建屋の屋根が吹き飛んだので注水が可能になった、少し前に起こった地震を参考に8か月前に広い免振重要棟が完成したので対応できた、風向きにより放射能が海のほうに流された、である。これらがなかったら避難民は15万ではなく4,000万人になっていた可能性がある(樋口/講演者)。
  • 合意とは、単に過半数超える、100%に達する、というものではない。反対には積極的反対と消極的反対がある。討論を続け消極的反対を納得させていく必要がある。各地域で、核のごみを議論する場を積み重ねる必要がある。核のごみに関しては、学術会議の提言に沿った方法しかない(今田/講演者)。
  • 話し合い無しで町長が核廃棄物調査受入に手を挙げたのは残念。納得した合意づくりを目指す(吉野/報告者)。
  • 学術会議の内部は、通すべき道理を通す、ということで一致している。今回の節目となったのは、大震災、原発への提言、研究費不正流用などでの学者の社会的責任が上がったこと、と学術会議自身は認識している(大沢真理/東京大学 名誉教授、当フォーラム世話人)。
  • 柏崎の原発再稼働問題は、相手が東電なので最も影響が大きい。合意形成については学術会議の提言による方法しかない。場合によっては、暫定保管と最終処分の中間の長期保管(100年単位)というステージが必要かもしれない(飯田哲也/環境エネルギー政策研究所所長、当フォーラム事務局担当)。

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