「ヨナオシフォーラム2020」(代表世話人:金子勝)は、児玉龍彦氏をスピーカーに迎え、下記のとおり、第12回 集会を開催しました。

第12回集会では、講師として初回、第6回に続いて改めて児玉龍彦氏(東京大学名誉教授)をお招きし、「経済再生に向けた地域からの膨大検査・隔離による感染抑制へ 第3弾」と題して、冬を迎えて新型コロナ感染拡大の第3波を迎えてしまった日本で、先駆的な世田谷区の成果も踏まえ、これからどのような対応をすべきか、ワクチンの可能性などについてもお話しいただきました。

開催概要

日時:2020年12月2日(水) 13:00 〜 14:30
会場:衆議院第2議員会館 第1面談室 および Zoom
主催:ヨナオシフォーラム2020(代表世話人: 金子勝)

講演:

「経済再生に向けた地域からの膨大検査・隔離による感染抑制へ 第3弾」

児玉 龍彦 / 東京大学 名誉教授

児玉 龍彦

東京大学 名誉教授

コメント:

コロナに感染した自身の現場体験

小川淳也/1971年香川県生まれ。立憲民主党所属の衆議院議員(5期)。 総務大臣政務官(鳩山由紀夫内閣・菅直人内閣)、旧立憲民主党代表特別補佐などを歴任。

千葉県での取り組み

田嶋要/1961年愛知県生まれ。立憲民主党所属の衆議院議員(6期)。 民進党選挙対策委員長代理、民主党千葉県連代表、経済産業大臣政務官(菅第1次改造内閣・菅第2次改造内閣)等を歴任。

島根県での受診控え問題

亀井亜紀子/1965年東京都生まれ。立憲民主党所属の衆議院議員(1期)。 立憲民主党島根県連代表。 参議院議員(1期)、国民新党政務調査会長(第4代)、みどりの風共同代表、同幹事長(初代)などを歴任。

まとめ

  • データに基づいた行動が必要。拡大期の間は行動を集積し行動規制、行政検査の徹底と無症状者の検査の徹底で感染のモニタリングを行い、致死的になる介護施設や医療機関での感染を防ぐべき。
  • また、感染がピークを越えても感染集積地の同定、さらにその地域での希望者全員の検査を行うことで氷山を小さくし、周期的に起こる感染への対策を立てるべき。
  • 「無症状の人はウイルスが少なく感染性がない」「無症状の人に検査しても意味はない」「症状のある人を見れば十分」「ニューヨークでは検査を拡大しても感染を防げていない」「検査数を物理的に増やせない」などは誤解である。
  • 感染集積地でないところこそ医療資源や経済活動で他の地域を支える必要。
  • 経済活動の一律の自粛は、自粛の中でも働かなければならない人の犠牲の上に、資源を持ったお金持ちがいるという誤った状態になる。トップダウンではなくボトムアップで地域的な取り組みが必要。
  • 無症状者の検査の拡大が不可欠。
  • 専門家会議の独立性。議事録をしっかりと残す必要がある。

講演趣旨

「経済再生に向けた地域からの膨大検査・隔離による感染抑制へ 第3弾」/児玉 龍彦

データに基づいた行動:陽性者も陰性が確認されたら迅速に社会経済活動に戻るべき。PCR検査での陰性確認の徹底と検査の低価格化、両方に取り組まないといけない。

ウイルスの変異:日本はいま第3波と言われているが、ウィルスのタイプとしては4種類目。一つの波の中での感染の集計を見ているだけでは新しい波に移っているという現象が正確に理解できない。コロナ対策はこの波の前半と後半で変わる。データに基づいて震源地を同定してこの波の拡大期には感染集積地での行動規制や検査が必要。

現在のウィルスの震源地:東京では、山手線上の大きな駅周辺や、路線でいうと埼京線、京浜東北線、常磐線の方向に感染が拡大。横浜では東京から東急JR線に沿って東京から流入する地域、そして繁華街に拡大している。北海道などの観光地感染も、東京や大阪から流入している。日本のように人口の移動が多い国ではエピセンターは急激に動く。

世田谷モデル:外から持ってきたウィルスが家庭内感染し、介護施設や病院に入ってしまうことを防ぐため、保育士、介護士、教員などの検査を徹底。

5つの誤解

  1. 「無症状の人はウィルスが少なく感染性がない」→ 症状のない人でもウィルス量は変わらない。症状が出た人も発症前に感染性が強いことが多い。
  2. 「無症状の人に検査しても意味はない」→ オーストリアのウィルスゲノム疫学によって、ウィルスの変異を見ながら、症状の有無にかかわらず感染経路の追跡ができる。実際に世田谷区の介護施設で感染を防げた。
  3. 「症状のある人を見れば十分」→ 免疫暴走により16日目くらいから急速に重症化することがあるため、ウィルスを発見したら注意深くフォローして、ウィルスの消失の有無を確認することが必要。
  4. 「ニューヨークでは検査を拡大しても感染を防げていない」→ ニューヨークでは検査を拡大して感染を抑えている。むしろコロナを軽視している州で感染が拡大している。
  5. 検査数を物理的に増やせないのではなく、検査数を増やす政策がとられていないだけ。

質疑応答

感染の実態をつかむための具体的な手法とは? どういうモニタリング方法があるのか?

どういう集団の中で感染が維持されているかという傾向、実証的データを各地域で分析する。最終的には武漢やシンガポールのような大規模集団検査を行い根絶に近づける必要がある。

オリンピックのためのワクチン確保は政治利用では?

現在開発されているジカ熱の予防のためのワクチンは化学合成で大量生産でき、大量に供給できる可能性がある。ただし、その持続性や次の変異への有効性、健康被害に注視することが必要。

自覚症状がなくても突然重症化するケースは多数あるか?

比較的軽いと思っていた人の中の1〜2%にはその可能性がある。

悪循環サイクルを断つためのポイントは?

世田谷モデルのように、網を張って、感染が起こったときにすぐ引っかかるようにする。空港の検疫も重要。また、震源地で対策をしないと流入は止まらない。震源地でのモニタリングの徹底が必要。

根絶しないと次々と感染が広がる?

一定のウィルスの数がないと震源地にはならないから、一定程度以下になれば根絶に近い状態になる。変異の大半はウィルスにとっては不利なものである。増殖のスピードが速い場合にどう対応するかが重要。

なぜ無症状者の検査が軽視されているのか?

医者や研究者は街の中の感染の専門家ではないため、当事者が考える必要がある。

治療法はない?

確立されつつある。子供を作る予定がなければ初期症状ではアビガンを飲むべき。

初めての感染症対策に、地方としては国にリーダーシップをとってもらいたいのでは?

両方が必要。国レベルでも最善の策を練る必要があるが、精密医療に基本は地域にあるため、自分たちで地域社会を作っていく努力が不可欠。

検査の拡大に否定的な理由は他にもあるか?

今回の大量検査は今まで感染症対策に遅れていた中国で始まったもの。現在の分科会にはSARSのときにWHOの一員として指導していた人が多いため、研究者間の嫉妬は根深いのではないか。また、情報化社会において日本が健康医療情報の変化についていけていない。最後に、病院や研究所を中心でなく、街の中に情報があるという考え方が大事。

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